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講演会・イベントのご報告 詳細

いま、‘学び’について考える ~三人寄れば文殊の知恵(エコノミスト×セラピスト×ティーチャー)~

【開催報告】BICライブラリ講演会
開催日時 2018年5月14日(月) 18:30より
場所 機械振興会館 6階 6-66会議室 (港区芝公園 3-5-8)
テーマ いま、‘学び’について考える ~三人寄れば文殊の知恵(エコノミスト×セラピスト×ティーチャー)~
講師 井上弘基 氏((一財)機械振興協会経済研究所首席研究員)/結城俊也 氏(理学療法士)/山本みづほ 氏(独立系司書・元教員)
内容  5月14日に開催いたしました「いま、‘学び’について考える~三人寄れば文殊の知恵(エコノミスト×セラピスト×ティーチャー)~」は盛況のうちに終了いたしました。ご参加くださった皆様、遅くまでありがとうございました。
 当日講師への質問をたくさんいただきましたが、すべてにこたえるわけにはまいりませんでしたが、後日講師の方々から質問に対して回答をいただきました。そのうちの代表的なものを、当日の様子を写した写真と合わせてここに掲載いたします。なお、下記にない質問とその回答につきましては、こちらのPDFファイルにまとめましたので、合わせてご覧ください。

Q1. 学校現場で、病院(リハビリ施設)で、BICライブラリAIを活用できるとしたらどんなことが考えられますか?
A1-1.
 生徒のドリル学習の採点、間違った生徒に類似の問題を出して繰り返し解かせ導くために、AIは使えると思います。(山本)
A1-2.
 医療現場におけるAI利用としては、診療支援があげられます。症状を入力すれば、膨大なデータから確率の高い病名を順に示していくというものです。近い将来、必要な検査や治療方針なども指示できるようになると言われています。リハビリテーション医療の世界でも、患者の疾患名や身体機能の状態などを入力すれば、必要な療法が指示される日が来るかもしれません。(結城)

Q2. 今の人間の労働の大部分をAIに委ねることができるようになりますでしょうか? その結果、人間が労働から解放されて学んだり、遊んだり消費したりする機会が増えるとい いのですが。
A2.
 歴史を振り返れば、それまで人間が担ってきた仕事の一部が、新しい技術の登場によって代替されていくのは明らかです。しかし当面はすべての仕事をAIが担うことはできないでしょう。なぜならAIは単純作業の繰り返しのような定型的な仕事にはむいていますが、答えがないような事柄に対して、思考を巡らし、意味を見出すことは得意ではないと考えるからです。もしすべての仕事をAIが担うことができたとしても、そのような状態が理想だとは思いません。働くことをとおして学ぶことは多いですし、すべての労働から解放されてしまっては、かえって「自由の刑」に処せられて苦しむ人が少なくないような気がします。
 よって現時点において大切なことは、AIとうまく共存していく道を探ることでしょう。そのためにはAIが持ちえないもの、すなわち主体や意思といったものを大切にする感性が必要になります。「そもそもなぜ..これを行うのか?」「この出来事にはどのような意味..があるのか?」といった問いかけは人間にしかできない営みです。もし私たちがこのような問いかけをせずに、ただAIの指示に従うだけの存在になってしまったらどうなるのでしょうか。人間はAIに従属するだけの無味乾燥な存在になってしまうでしょう。そうならないためには、「なぜ」という問いを常に持ち続ける力が必要です。そしてこのような根源的な力を身につけるためには、哲学・思想・歴史・文学・芸術など幅広い学問に対して造詣を深めていくことが重要でしょう。古今東西の英知には、私たちが生きていくうえで大切にしなければならないことの本質が隠されています。「人間対AI」という二項対立から脱却するためには、「なぜ」という問いを堅持しながら、AIをうまく使いこなしていくために自らも学び続ける姿勢(キープラーニング)が肝要だと思います。(結城)

Q3. 中教審の示す教育のかたちが「あるべき姿」・目指すべきゴールだとしてそのための予算等リソースが公立学校にはかなり不足しているわけですが、しかたがないので、代わりにかけた分をうちでするとなると、まず何をしますか、できますか?
A3.
公共図書館との連携で、例えば中学3年生の『おくのほそ道』の学習で、江戸時代の旅についての資料を40冊欲しいとFAXを入れると、宅配便(年度の予算のある限りは図書館持ち)で送られてくるシステムが、本市にもあります。まずは、他機関との連携の強化に努めます。(山本)

Q4. 運動の再学習のための 3つの視点のために必要な資質、つまり「多様性への志向」(観点1)、「言語化/言葉と運動の」(視点)、「内省による抽象化」(視点3)というのはいずれも、結構高度な精神作用でその資質の獲得には若いうちの知的なトレーニングが必要なように思われるのです。(失われた運動能力の再学習はともかく)学び直しについて言うなら、「学び直したいときは、すでに老いており、その資質はなし」ということになりがちでないかと思うのですが、いかがでしょうか。あるいはこの3つを簡単に身に着けるプログラムなどあれば教えてください。
A4.
知能には流動性知能と結晶性知能の 2 種類があるという理論があります。
 流動性知能とは、新しい状況へ適応するときや柔軟な発想を生み出すときに必要な能力です。具体的には思考力、推論力、記憶力、計算力などがあげられます。この知能は20~25歳ごろにピークを迎えると言われています。
 一方、結晶性知能とは、過去の経験やデータを土台とした専門的、個人的能力のことです。この能力は過去の経験に基づくものであるため、加齢による低下が少ないことが特徴です。確かに年を重ねれば、新しい環境への適応能力や斬新な発想力は劣化していくでしょう。しかし経験により蓄積された知のデータベースを利用すれば、推論や応用する力を引き出すことができるはずです。
 したがって「学び直したいときは、すでに老いており、その資質はなし」と思うことはありません。むしろ過去の経験やデータなどに立脚したうえで学び直すことで、より深い専門性や他分野への応用力を培うことができるでしょう。結晶性知能は言語性知能とも言われています。よって文字で情報が凝縮されている本を読むという行為は、この知能を養うための良い方法だと思います。そのためには多様な知に触れるためにさまざまな分野の本を読むこと、読んで思ったことや感じたことを言葉として表出すること、そして物語や作者の主張の重要な部分(本質)を抽象化することです。
 これらのプロセスを大切にすることで結晶性知能を高めてみてはいかがでしょうか。年を重ねたからこそできる学び(学び直し)がきっとあるはずです。(結城)

Q5. 「ALVS教科書が読めない子どもたち」では子供の読解力の低下(そもそも教科書に書かれていることが理解できていない)が指摘されていますが、このようなことは現場でもお感じになりますか?
A5.
はい、私もこの本は読みましたが、読解力の低下は年々強く感じていました。特に生徒指導では、こちらが聞いていることに対して頓珍漢な回答が帰って来る時に、単語をかみ砕いて分かりやすく質問し直すことが増えました。また、話を聞き取っていないことも多々あります。
 例:「明日14:00から市民会館で、吹奏楽部のコンサートがあります」
   「先生!どこであるんですか? 」
   「先生!何時からですか? 」(山本)

※ その他の質問につきましては、こちら(PDF)もご参照ください。

独立系司書・元教員の山本みづほ氏による講演
独立系司書・元教員の山本みづほ氏による講演

理学療法士・結城俊也氏による講演
理学療法士・結城俊也氏による講演

(一財)機械振興協会経済研究所首席研究員・井上弘基氏による講演
(一財)機械振興協会経済研究所首席研究員・井上弘基氏による講演

(株)ラピッツワイド・広瀬容子氏をファシリテーターに迎えて参加者とのディスカッション
(株)ラピッツワイド・広瀬容子氏をファシリテーターに迎え、参加者とのディスカッションも行いました。